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コラム

2025年12月25日

「侍女の物語」と私たち

 先日、すっかり枚数の少なくなった年賀状を書いていました。ありがたいことに学生時代の友人ともまだこの年に1回のつながりがあるのですが、ふと、その友人達のほとんどが名前が変わっていることに今更ながら違和感を持ちました。苗字が変わっているのは女性だけで、男性はみな同じ。それはそうだろうと思います。事実、夫婦の95%は女性が姓を変えているのですから。

 我が家において、現在の首相が首相になった時、「選択的夫婦別姓の実現は遠のいたな」というのが感想でした。首相が選択的夫婦別姓に反対しており、強制的同姓による不都合は通称使用拡大によって解消しようという立ち位置をとっているということを知っていたからです。通称使用が拡大されるんだから同姓でもいいはず、というのであれば、男性が改姓したっていいはずなのですが、現実はそうはならず、女性が改姓させられる理由付けにされるだけでしょう。

 しばらく前から少しずつ読み進めていた、マーガレット・アトウッド著「侍女の物語」を、この度やっと読み終えました。以前にも紹介したディストピア小説ですが、現在の私たちの生活にも通じるものがたくさんあって、背筋が寒くなるような描写もありました。この世界では、女性はあらゆるものを取り上げられます。まずは財産、次に仕事、そして家族。本を読むことすらも禁じられます。そして健康な子どもを産んだ経歴のある女性は「侍女」という「代理母」にされ、政府の高官の元に送られその高官の妻の代わりに子どもを産むことが仕事となるのです。侍女は名前も取り上げられ、自身が勤める高官の名前の入った、「○○のもの」を意味する「of ○○」という名前をつけられます。オブフレッド、オブグレンなど。その家で子どもを産んでまた別の家に勤めることになれば、そこの高官の名前が入った名前になります。このように全てを取り上げられ、その中で「この道であれば保護してあげますよ」という道を示され、その中で感情を殺して生きる、そんな女性がこの物語の主人公です。人間にとって、名前を奪われ、自身を所有する者の名前を名乗らされ、誰かの所有物であるということを絶えず自覚させられながら生きるということの、いかに屈辱的なことか。

 日本は強制的夫婦同姓なので、結婚するということは、どちらかが名前を変えるというリスクを負わなければなりません。そのリスクを95%は女性が背負っている。おそらくは日本国憲法が発布され「どちらの姓を名乗ってもいい」となった時には、それは女性の解放を期待されたのでしょうが、80年経ってもなお、それはほぼ改善されることはなかったのです。これではまるで侍女だ。結婚することが、「of ○○」と名乗ることとほぼ同義なのであれば。

 「侍女の物語」では、上記の女性への迫害が、「少子化の抑止」という命題のもとに行われます。女性にはお金も、仕事も、学問も、名前すら、必要ない。子どもを産むという高尚な目的の前では。どこかで聞いたような話です。

 今、ここがすでにディストピアであると、以前にも書きましたが、それは変わらずに進行中のようです。なかなか変わらんなー、くそう。

 年末年始は家族と顔を合わせるという人も多いでしょう。その分「家」にまつわる問題が表面上に上がりやすい時期でもあります。実家や義実家と顔を合わせれば嫌な思いをすることもあるでしょう。それでもあなたは「of ○○」ではないし、「家」の所有物でもない。「家」はしょせん枠組みでしかありません。あなたの人生はあなただけのもの。

 来年のあなたが、あなたのための時間を過ごせますように。良いお年を。

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