コラム
2025年11月4日
映画館が好き
前回、学会参加のために東京に行った話を書きましたが、そこで嬉しいことがありました。最近の私の推し映画監督は阪元裕吾監督なのですが、先日監督の最新作「フレイムユニオン 最強殺し屋伝説国岡<私闘編>」を見まして、これがまあ面白かった。私はアクション映画が好きなのですが、監督本人もおっしゃってますが低予算の中でも非常に見応えのあるアクション、そしてそれを支えるストーリー。親子の対決の話でもあり友情努力勝利の話でもあり、家父長制に抗う話でもあり。もともと期待して行ったのに、それ以上のものをもらって帰れました。
ただ一個残念だったのが、監督が自主制作で撮っている同シリーズのBlu-rayディスクがもうそこの映画館で売られていなくて、買えなかったのです。監督が言うには、物販が映画館で売れると、その収入のいくらかが映画館に入る。それが映画館特にミニシアターを支える、存続させるものになるのだそうで、その一助になりたいと思っていたのですが、もうなかったのでその日は仕方なく帰ったのです。そして東京に行った日、ふと、「あれ?こっちの映画館にはひょっとしてまだBlu-rayあるんじゃね?」と思い立ち、作品が公開されていた映画館に行ってみたところ、あったー!しかも「なくなってたんですけどまた入荷したところなんですよ」と販売の方。超ラッキー!来た甲斐あったわあ。
私は子どもの頃から映画が好きで、でも田舎だったので、映画館で見られる映画は限られていました。高校生の頃に近くの映画館でレイトショーでミニシアター系の映画が流されるようになり、よく一人で見に行きました。大学進学で東京に行くと、映画館も多くて色んな映画を見れて夢のよう。当時学生は1000円でした。時は流れ、子どもが生まれると映画にもなかなか行きにくくなりました。子どもと一緒に、ドラえもんや特撮映画はよく見ましたが、なかなか自分の見たい映画は見に行けません。CSなどに加入し、家で見れるし、と思ったりもしますが、やっぱり映画館で見るのは格別です。子どもが学校や幼稚園に行っている間を縫って、見れそうな時間に見れそうな場所でやっている映画を探して見る生活がしばらく続きました。そしてコロナ禍。ミニシアター存続の危機。あの時私は少しばかり寄付することしか出来なかったけれど、ミニシアターを守るために何かがしたかった。
コロナ禍は過ぎたとされていますが、物価高にあえぐ人々が多い中で、映画館に行くなんてとても贅沢なことのようになってしまいました。映画はサブスクで見放題な時代、ミニシアターは特に厳しいでしょう。でもやっぱり私は映画館が好きなんだ、なくなってほしくないんだ。文化の多様性とか余暇を楽しめる余裕とかももちろんなのだけど、単純に、色んな映画館にそこにあってほしいんだ。チェンソーマンのマキマさんみたいに、色んな映画を思うままにたくさん見たいんだ。
そんなわけで、映画館で阪元監督のBlu-rayが買えて、少しはミニシアターに貢献できたような幸せな気持ちに浸りながら、私は東京での夜を過ごしたのでありました。
あー、映画館でたくさんたくさん映画が見たい。見れる世界であってほしい。制作側が作りたい映画を、スタッフ・演者・観客の権利が守られる映画を、映画への愛情が溢れた映画を、たくさん、たくさん。そしてその世界を構成する一人として、祈るだけでなく、できることをやろう。この先もずっとずっと、映画館に行けるように。
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