コラム
2025年9月16日
変わらないこと、変わり続けること
最近、編み物をよくしています。もともと手芸は好きだったのですが、忙しい日々が続いてしばらく離れていたところ、ここの所ふとしたきっかけでまたそれが再燃しました。最近はSNSで世界中の手編みの作品を見ることができますから、それを見ていたら「自分も!」という気持ちがなおさら盛り上がり、時間を見つけては少しずつ編んでいます。
手芸だけでなく、絵を描いたり本を読んだり映画を見たり、私はおそらく趣味と言えるものが多い方なのだと思います。しかし思い返すと、それは私にとって、一人の時間をどのように過ごすか、という問題を解決するための方法だったのだろうと思います。私の両親は私が生まれる前から忙しく過ごしていたため、それは私が小さな頃も同様でした。ですので、私は両親のいない時間を何とかして埋めなければならなかったのだろうと思います。手を動かして何かを作っていたり、物語に没頭している間は、幼い私はさみしさを感じずに済んだのでしょう。おかげで私は多くの漫画や小説や映画に出会い、それらを楽しむことで世界を広げることができましたし、絵を描いたり手芸をすることで、自身で何かを作る楽しみも知ることができました。また、その趣味の多さは、今現在カウンセリングで色んな人と話をするときにも役立っていると感じます。
幼い頃、自身が置かれる環境に対してどのように適応するか、ということは人によって異なります。子どもにとっては両親や周囲の数10mが世界の全てですから、「世界とはこういうものだ」「この世界の中ではこう振る舞うのがいいのだ」と考え、その世界の中で生き延びるために適応していきます。それ自体は全くおかしいことではありませんし、間違っているということもありません。幼いあなたが、小さな体で、生き延びるために必死で考えたことだから、それは否定されるべきものではありません。
しかし、場合によってはそれが現在における不都合を生み出していることもあります。なぜなら、それはあくまで両親やその過ごした環境に対しての適応であって、今現在あなたが相対している相手は、両親でもなければその環境でもないからです。子どもの頃の環境に適応するために身につけた方法は、大人になった今では適していない場合があるのです。大人としての現在において、うまくいかない、いつも同じようになる、ということが起こっていたら、それはその幼い頃の適応が今に合っていないのかもしれません。
あなたが子どもの頃に置かれていた環境と今は別のものです。そして同時に、あなたももう幼い非力な子どもではありません。あなたには、その環境を変える力や、誰かに協力を仰ぐ力、自身の行動を変える力もあります。その適応の良い面に目を向ける力も。
私にとって一人のさみしさを埋めるための方法だったものが今私の人生を豊かにしてくれているように、あなたが幼い頃に身につけた自身を守るための方法は、きっと今のあなたを助けてくれている面もあるはずです。それらはあなたの強みとして残しつつ、現在にそぐわない部分はその都度マイナーチェンジしていくことが、「今、ここ」に生きるということなのではないかと思います。
変わらないところと、変わり続けていくところ。どちらも持っていて、どちらにも行ける。それがあなたそのものなのです。
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