コラム
2025年7月7日
投票というコーピング
梅雨が早々に明けてしまい、連日の猛暑日が続いています。こんなに暑いのが当たり前になって、それに少しずつ生活を合わせながら、なんとか乗り切って秋を待つ、という暮らしをもう何年もやっている気がします。私たちの生活の中には常に何らかのストレスがあり、それは大きなものから小さなもの、長い期間続くものもあれば短い期間で終わるものもあり、様々ですが、猛暑の数ヶ月間というのは、長くそれなりに大きいストレスとも言えるかもしれません。
私たちはそのストレスに何とか対応するために、様々な方法を取ります。それをコーピングと言いますが、これは「問題焦点コーピング」と「情動焦点コーピング」の2つに大きく分けることが出来ます。「問題焦点コーピング」は問題そのものにアプローチして、ストレスを減らそうとすることです。部屋が暑いという問題があるとすると、部屋の窓を開ける、エアコンをつけるなどがこれにあたります。「情動焦点コーピング」は、自身のストレスへの捉え方や感じ方を変えることでストレスを減らそうとすることです。部屋が暑いなら、自分が薄着になる、冷たい飲み物を飲んで体を冷やすなどがこれにあたります。部屋の暑さ自体は変わってはいません。同じ「部屋が暑い」という問題に対しても、私たちはそれぞれで色々な方法を使って少しでも快適に過ごせるように努力しているのです。
コーピングの方法は様々ですが、私たちはもしかして、情動焦点コーピングばかりがうまくなっているのではないかと思います。自分の手に負えない問題が起こったとき、楽しいこと考えて気を逸らしたり、誰かとそのことについて話して共感を得てホッとしたり、「その問題は自分にとってさほど重要ではない」と考えるようにしたり、そんな情動焦点コーピングを駆使して、私たちは現在を生きているかもしれません。秋が来るのをじっと待つように。ですが、そうするとそのストレスを起こす大元の問題は放置されたまま、何ならどんどんひどくなるかも知れません。
問題焦点コーピングで問題そのものに働きかけても、すぐには変化につながらないことも多くあります。それでもその問題に働きかけ続けることはもちろんしんどいことですし、自分の捉え方を変えた方が楽なのではないかと思うことも無理はありません。ですが、その問題に何らかの変化が起こったとき、「自分に問題を変えられる力がある」と感じることができます。それはその後のストレス対処、ひいては人生において、とても有意義なことなのです。
現在において私たちが直面する多くの困難に対して、どのようなコーピングをして乗り切るかは人それぞれですが、私たちには問題そのものを変えるという選択肢があり、その力があるのだということも、忘れずにいたいと思います。そのための一票を持っているのだということを。
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