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コラム

2025年3月24日

息子の旅立ちに寄せて

 気が付けばもう3月も終わりに近づいてきました。毎年、年が明けてからの3か月の早さには驚きます。三寒四温とは言いますが、寒波と初夏のような陽気を行ったり来たりしながら、少しずつ春が近づいています。

 この春に、22年間一緒に暮らした長男が就職に伴い家を出ることになりました。田舎育ちの私からすると子どもは大学に入る時点で家を出るものだと思っていたので、そう考えれば予想より4年も長く一緒に暮らしていました。実家なんて、一刻も早く出たいと思うものではないのか。高校生や大学生は一人暮らしの自由にあこがれるものではないのか。長男にはそんな素振りが全くありませんでした。居心地悪いと思われるよりはもちろん良かったのだけれど、なんだろうこの釈然としない感じ。

 本来なら、漫画「違国日記」(ヤマシタトモコ著)の主人公よろしく、社会という大海原に旅立つ息子に愛情あふれた激励の言葉を記すべきなのかもしれない。でもどうしてもそんな気持ちになれない。子どもが巣立って寂しいという感情も驚くほど無いのです。

 実感が湧いていないだけなのでしょうか。

 正直自分は決していい親ではなかっただろうと思います。幼かった息子に暴力をふるったこともあるし、悲しい思いをさせたこともたくさんありました。何とか息子を死なせることなくこの年齢まで育てることができたけれど、ニュースで見かける子どもを死なせた母親と自分は何も違わないとよく思っていました。その体感は現在の自分の臨床活動に役立っているとは思いますが、息子からしたらいい迷惑でしょう。暴力なんてふるわれない方がいいに決まっています。

 そう思えば、私はもうその「息子を傷つけるかもしれない」という恐れから解放されることに心底ほっとしていて、寂しさを感じていないのかもしれません。息子が大学生になっても実家で呑気に過ごしていることに釈然としないのも、息子がそうであることで私は彼に許されているのかもしれないと安堵するのと同時に、呑気な顔しやがって、私なんて許されてはいけないのに、とも心のどこかでいつも思っていたからのような気がします。そしてそんな風に実家で暮らせることへの羨望と。そんな後悔やら恐れやら羨望やら色んな感情がないまぜになる対象がいなくなることで、とりあえずはそこから御役御免になることにほっとしているのかもしれません。

 子育ては、私にとって、自分が向き合いたくないものと向き合うことでした。子どもをかわいいと思う気持ちも憎たらしいと思う気持ちも、いい母親になりたいという気持ちもそうなれない自分が大嫌いな気持ちも、何もかも飲み込んで、子どもを生かさなければいけない。

 もういいでしょう。やりきったでしょう。ここから先はもうその荷を下ろしていいんだよ。

 

 なんだ、旅立つのは息子ではなく自分の心だったのです。どうりで寂しくもないわけです。大海原は息子だけのものじゃない、私のものでもあるのだから。

 息子よ、もしどこかの港で会ったら、その時は何かおいしいものを一緒に食べよう。

 それまではお互いに、良い旅を!

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